歯みがきは、虫歯や歯周病を防ぐために欠かせない生活習慣です。
最近では、口の中の環境が全身の健康や腸の炎症とも関係している可能性が注目されています。
今回、日本人の潰瘍性大腸炎患者275人を対象に、歯みがきの回数や残っている歯の本数と、腸の粘膜の状態との関連を調べた研究が報告されました。
潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に慢性的な炎症が起こる病気です。症状が落ち着くだけでなく、内視鏡検査で炎症が認められない「粘膜治癒」が、治療目標の一つとされています。
研究では、1日に歯をみがく回数別に、粘膜治癒が確認された割合を比較しました。
・1日1回以下:15.4%
・1日2回:24.8%
・1日3回以上:32.1%
年齢や性別、喫煙、飲酒などの影響を考慮した解析でも、歯みがきの回数が多い人ほど、粘膜治癒が認められやすいという関連が示されました。一方、残っている歯の本数と粘膜治癒との間には、明確な関連は認められませんでした。
なぜ歯みがきと腸の状態が関係するのでしょうか。
口の中と腸は、それぞれ独立した場所ではありません。
口腔内の細菌が腸へ移動したり、口の中の炎症が全身の免疫反応に影響したりする可能性があり、こうしたつながりは「口腔―腸管軸」と呼ばれています。歯みがきによって口腔内の細菌や炎症が減ることが、腸の環境にも何らかの影響を与えているのかもしれません。
ただし、この研究だけで「歯を1日3回みがけば、潰瘍性大腸炎が改善する」と結論づけることはできません。
今回の研究は、ある時点での歯みがき習慣と腸の状態を比較したものです。
歯みがきによって粘膜が治癒したのか、それとも病状が安定している人ほど健康的な生活習慣を保ちやすかったのかは区別できません。また、歯みがきの方法や歯科受診の状況、食生活など、評価されていない要因もあります。
毎日の口腔ケアが口の中だけでなく、全身や腸の健康とも関係している可能性を示した興味深い研究です。日々の歯みがきと定期的な歯科受診を、改めて大切にしたいと思わせてくれる結果ではないでしょうか。
参考文献
Yagi S, Furukawa S, Miyake T, et al. Association Between Toothbrushing Habits and Mucosal Healing in Japanese Patients with Ulcerative Colitis. Digestive Diseases and Sciences. 2026.
https://doi.org/10.1007/s10620-026-09990-8
※本記事は医学論文の内容を一般の方向けに紹介したものであり、個別の診断や治療方針を示すものではありません。
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